キーワード: Enhanced 911, FEMA, アメリカ同時多発テロ事件, ニューヨーク市消防局, 三次元表示, 世界貿易センタービル, 危険箇所, 地理空間情報, 緊急時管理システム, 高熱源箇所
緊急事態で活用される地理空間情報 – 「24」の場合
皆さんは、24 というTV ドラマをご存知でしょうか。キーファー・サザーランド扮するジャックこと、主人公のジャック・バウアーがテロ活動を阻止するために、危険に身を投じていく大人気ドラマです。このドラマの中で、ジャックは人工衛星をよく使っています。「今、現場に到着した。人質と犯人の位置関係、人数、建物の構造を知りたい。至急、衛星画像を送ってくれ。」といった具合にです。
アメリカ同時多発テロ事件で集結する地理空間情報のスペシャリスト
アメリカ同時多発テロと聞いて、第一に炎上する世界貿易センタービルを思い出す人は多いと思います(図1)[1]。総死者数2819人、被害損益1兆円以上に上るこの事件は、テロ活動としては史上最大級でした[2]。
ニューヨークの世界貿易センタービルとワシントンD.C.のアメリカ国防省・ペンタゴン本庁舎がテロ攻撃を受けた大事件の知らせは、瞬く間に世界中を駆け巡りました。この大惨事に対し,アメリカ全土から地理空間情報の把握・分析を専門とするエキスパートたちが被災地へと急行しました。衛星画像などを使って瞬時に状況を把握し、地図上に表すことができる技術は、正確な情報を得ることが難しい状況下で救助活動の迅速化に貢献することが期待されていました。
アメリカ全土から災害対策チームが現地へ向かいはじめるのと時を同じくして、ニューヨークの地理空間情報のスペシャリストやマネージャーは緊急対応のための臨時拠点の設置場所を探し回っていました。というのも、世界貿易センタービル7 階に設置されていた当時の危機管理センターは、その機材すべてをビルと共に破壊されていたからです。
地理空間情報を活用した救助活動の支援体制
ニューヨークの地理空間情報分析チームは、すぐさま新しい解析本部を2 箇所に設置し、被災地周辺の地図作成に取りかかりました。テロ攻撃を受けた世界貿易センタービルでの救助活動は主にFEMA(Federal EmergencyManagement Agency:連邦緊急事態管理庁)とニューヨーク市消防局の指揮下で行われました。
FEMA は衛星画像などから空間情報を把握する技術によって構成される緊急時管理システムを使って、地震などのさまざまな災害に対応する機関です。この救助活動で、空間情報分析チームが持つ技術はその能力をいかんなく発揮しました。
現場では懸命な救助活動が行われていましたが、立ち上る煙と膨大な量の瓦礫のために活動は困難を極めていました(図2) [3]。そこで、空間情報分析チームは廃墟と化した建物の地図化を集中して行うことで、煙がくすぶり続ける現場で活動する消防士や復旧チームをサポートしました。また、ニューヨーク市を撮影した航空写真と世界貿易センタービルの広大な地下街の平面図から、燃料タンクなどの危険箇所、人間の生存可能な空間が確保されている可能性が高いエレベーターなどを特定し、都市救助隊の迅速な対応を可能にしました。
この他にも、航空写真や人工衛星データを使って、瓦礫の山の高精度な三次元表示(図3)[4]や高熱源箇所(完全に鎮火されていないような場所)の特定(図4) [5]を次々に行きました。
地理空間情報分析チームによって作成された地理空間情報は、現場で働く組織の他に、自治体や州、連邦等の自治体、メディア、高官の視察など、地理的情報を必要としていた多くの組織によって活用されました。
こうして地理空間情報分析の利便性が認識されるにつれて、災害状況を記した地図の作成の要請が殺到するようになり、地理空間情報分析チームによって整備された地理空間情報は、現場に必須の情報源となりました。
立ち入り規制区域や活動組織の配置、停電区域、交通規制箇所、建物の状況を示した地図は日々更新され、現場で利用されていきました[5]。
地理空間情報技術の更なる浸透
アメリカ同時多発テロ事件において,地理空間情報の重要性が改めて認識されたことを受けて、2005 年5 月19 日に米連邦通信委員会は911 番(日本の119番にあたる緊急通報用電話番号)などの緊急発信の際に、発信源の位置情報を防災当局に送信するEnhanced 911 システムへの対応を企業に義務付ける発令を行いました。こうして、アメリカ同時多発テロに立ち向かった多くの人々の経験は、確実に活かされつつあります[6]。
皮肉にも、このテロ事件が地理空間情報分析に対する評価を確立するにいたる一役を担ったのは間違いないと思います。しかし、これらの優れた技術は本来、人間がよりよく生きるために活用されなければなりません。この事件を通じて得た教訓を、これからは同じ人間が起こした災害に対してではなく、自然災害から人類を守る手段、より住みやすい社会を作っていく手段として行使されることを願います。
参考文献
- The 9-11 Commission Report.Final Report of the National Commission on Terrorist Attacks Upon the United States, Official Government Edition.
- Death, destruction, charity, salvation, war, money, real estate, spouses, babies, and other September 11 statistics. http://nymag.com/news/articles/wtc/1year/numbers.htm, 参照2010 年3 月28 日.
- PUBLIC EYE.World Trade Center – New York City 9-11 Terrorist Attacks. http://www.globalsecurity.org/eye/wtc-pics.htm, 参照2010 年3 月28 日.
- Paul, Y. (2004). The Role of GIS in the Response to the Terrorist Attacks of September 11 in New York City. Annuals of Disas. Prev.Res.Inst.,Kyoto Univ.,No.47C,2004.
- アメリカ同時多発テロ活動を支えたGIS チームhttp://www.esrij.com/industries/casestudies/02_kiki/cs02_04.pdf#search=’アメリカ同時多発テロ事件の対応活動を支えたGIS チーム’, 参照2010 年3 月28 日.
- FCC、VoIP 事業者に緊急電話通知システム「E911」対応の義務化命令http://www.nikkeibp.co.jp/archives/376/376048.html, 参照2010 年3 月28 日.















